本記事では、がんの基礎的な情報と、私が経験した膵臓がんについて、その特徴などを詳しくご紹介致します。
目次
がんってどんな病気?
がんは身近な病気
がんは、日本人の死因の1位であり、その割合は年々増加傾向にあります。国立がん研究センターが発表している最新がん統計によれば、生涯でがんに罹患する確率は、男性62%、女性47%(2014年のデータに基づく)とされており、現在、日本人の2人に1人が一生のうちになんらかのがんにかかる可能性があり、全ての人にとって身近な病気となっています。
がん(悪性腫瘍)と良性腫瘍の違い
がんとは、悪性腫瘍とも呼ばれる通り「腫瘍」の一種です。
腫瘍には、がん(悪性腫瘍)と呼ばれるものと、良性腫瘍と呼ばれるものの2種類がありますが、がんも良性腫瘍も、いわゆる「できもの」「コブのようのなもの」です。
しかし、がんには良性腫瘍と異なる3つの特徴があり、良性腫瘍よりもタチの悪い病気となっています。
がん(悪性腫瘍)の特徴①:増殖スピード
悪性腫瘍、つまりがん細胞は、人間の正常な新陳代謝の都合を無視して勝手に増殖を繰り返しし、止まることがない、という特徴があります(自律性増殖)。良性腫瘍の場合も自律性増殖を行いますが、がん細胞の方が増殖スピードは速いです。
がん(悪性腫瘍)の特徴②:浸潤と転移
がん細胞は、周りの組織や臓器などに染み出るように広がっていき(浸潤)、時には、血液やリンパ液の流れに乗って体中に飛び火し(転移)、次から次へと新しいがん細胞を作る、という特徴があります。
がん(悪性腫瘍)の特徴③:悪液質(あくえきしつ)
がん細胞は、他の正常な組織や細胞が摂取しようとする栄養をどんどん奪っていきます。そのため、正常な細胞に栄養や酸素が十分に供給されず、体が衰弱していきます。
がんの発生と進行の仕組み
がんの発生と進行は、以下のような流れで進んでいきます。
- 遺伝子に傷がつき、異常な細胞ができる。
- 異常な細胞が増殖する。(がん化)
- 異常な細胞が固まりとなり、周りに広がりやすくなる。(腫瘍形成)
- 血管などに入り込み、全身に広がる。(転移浸潤)
正常な細胞の一部ががん化しても、免疫の働きによりがん細胞を死滅させ、本格的ながんに発展するのを防ぐことができます。こうした生体防御のシステムを打ち破って、がんとして発症するまでには10年、20年という長い年月がかかります。
また上記の通り、がんは遺伝子が傷つくことによって起こる病気です。そのため、がんという病気が人から人へ感染することはありません。
がんの種類
がんは体の至る所で発生する可能性がある病気です。発生した部位により進行のスピード(転移のし易い部位やそうでない部位)が異なったり、発見のされやすさ(早期発見されやすい部位とそうでない部位)の違いがあったり、手術のし易さなど、部位毎で治療成績が異なります。
ただ、いずれの部位にも共通するのは、発見が遅れれば遅れるほど治る確率は低くなるという事です。そのため、がんの治療においては、如何に早期の段階でがんを見つけ治療をするか、ということが非常に重要になっています。
以降は、実際に私が経験した膵臓がんについて、より詳しく述べていきたいと思います。
膵臓がんについて
膵臓について
膵臓は、胃の裏側(背中側)に位置し、長さ20㎝程度の横に細長い臓器です。

出展:国立がん研究センターがん情報サービス
膵臓の機能は2点あります。
- 食物の消化を助ける膵液を作る機能(外分泌機能)
- インスリンなどの血糖値の調整をするホルモンを作る機能(内分泌機能)
膵臓で作られた膵液は、膵管を通って主膵管と呼ばれる1本の管に集められ、十二指腸へと流れていきます。また十二指腸へと流れ出る途中には、十二指腸乳頭と呼ばれる場所があります。十二指腸乳頭には膵液の他に、肝臓から胆汁が運ばれて来ており、ここで膵液と胆汁が合流して、十二指腸へ流れていきます。
膵臓がんの特徴
膵臓にできるがんのうち、90%以上は膵管の細胞にでき(膵管がん)、膵臓がんとは一般的に、この膵管がんのことを指します。
膵臓がんはその悪性度の高さ(成長の早さ)や位置関係から主に以下に示す2つの特徴があり、消化器がんの中で最も予後が悪いがんとされています。
- がんが発生しても症状が出にくく、初期の状態で見つけるのが非常に難しい。
- 小さながんでも、すぐに周囲への浸潤やリンパ節への転移、遠隔転移を伴うことが多い。
膵臓がんの治療で最も効果が期待されるのは手術による外科的切除ですが、発見された時には既に進行していることが多く、切除可能な症例は4割前後と言われています。
膵臓がんの原因
膵臓がんは、他のがんと同様、喫煙、飲酒、肥満などの生活習慣、遺伝、ストレスなどが原因と考えられています。
また糖尿病や膵炎などがある人も、健康な人と比べて膵臓がんになるリスクが高いと言われています。(糖尿病や膵炎も、喫煙や飲酒などよ生活習慣が原因であることが多いです。)膵臓の炎症を繰り返し起こす人は、膵臓の細胞ががん化しやすくなるため注意が必要です。
私の場合、特に膵臓の疾患もなく、遺伝によるものでもなさそうでした。また、週2、3日はサッカーをしており、飲酒もたまに飲みたくなったらビールを1本飲むぐらいで、自分自身では比較的健康な方ではないかと思っていました。
ただ煙草は1日20本程度吸っており、一人暮らしで食生活も乱れており、そういった積み重ねによるものかもしません。
がん全般に共通しますが、禁煙や節度のある飲酒、適度な運動、バランスの良い食事、ストレスを溜めないことががん予防のためには重要だとされており、今健康な方も日頃から心がけて頂ければと思います。
膵臓がんの生存率
5年相対生存率
5年相対生存率とは、がんと診断された患者さんのうち、5年後に生存されている方の割合を示しています。
膵臓がんの特徴でも述べているように、膵臓がんの悪性度は高く、他のがんと比較しても5年相対生存率はかなり低くなっており、膵臓がんの治療の難しさが分かります。
しかし、この数字の読み取り方には注意が必要だと個人的には思っています。
なぜなら、この5年相対生存率は2006〜2008年の診断例を元に作成された古い統計データであり、近年著しい進歩を遂げている最新の医療に基づいたデータではないからです。
少なくとも膵臓がんにおいては、従来の抗がん剤よりも効果があると臨床試験で示された、フォルフィリノックスとナブパクリタキセルという新しい抗がん剤が、それぞれ2013年、2014年に国内で承認されており、これらを用いた治療がされている直近の5年相対生存率は、改善されているのではないかと考えています。
また、膵臓がんの患者さんは、発見された時には既にがんが進行しており、手術が受けられないケースが非常に多いことが、他のがんと比べて5年相対生存率が低いことの要因の1つと考えられますが、これらの新たな抗がん剤を用いることで、「手術不可能とされた膵臓がんを縮小し、手術可能にする」“術前療法”と呼ばれる治療法も期待されています。
このような新たな治療法により、これまで手術を受けられなかった方が手術を受けられるようになってきており、5年相対生存率も改善されているのではと期待しています。
(私の場合は幸いにも早期発見で「手術可能の膵臓がん」でしたが、より治療効果が高いということで、術前療法を受けました。)
サバイバー生存率
サバイバー生存率とは、がんと診断されてからの年数別の生存率を指します。例えば、2年サバイバー生存率とは、診断後2年経過した時点で生存している人の5年生存率を示しています。
5年相対生存率と同様に、膵臓がんは診断時のサバイバー生存率が最も低いですが、1年、2年と時間が経過(生存)すると共に、他のがんのサバイバー生存率に近づいていることが読み取れます。
これは、膵臓がんが発見しづらいがんで、発見時には既に進行し、治療が難しいケースが多い事に起因していると考えられますが、逆に言えば、早期発見であったり、術前療法などの新たな治療法で、より多くの方が手術を受けられるようになれば、診断時からの生存期間も長くなり、生存率は大きく改善されるのではと個人的には思っています。
サバイバー生存率から見れば、診断後5年間生存された方の5年生存率は約80%です。
私は、本記事を執筆中の2018年10月現在、がんと診断されてから約2年が経過しております。つまり後3年生きれば、約8割の確率でプラス5年間生きられるということであり、まずは生存5年を目指していこうと思っています。
5年相対生存率という数字だけを見ると絶望的な気持ちになるかもしれませんが、こういった見方もあるということで、患者さんの皆様にも少しでも希望を持って、前向きに治療に取り組んで頂けたらと思います。
参考/出展
データ引用元
当記事に掲載されている統計データは、こちらのサイトより引用しております。他にもがんの統計に関する様々なデータが掲載されておりますので、ご興味のある方は是非こちらもご参照ください。
参考
当記事は、国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター が運営する「がん情報サービス」というサイトを参考に作成しています。より詳しい情報が記載されていますので、是非こちらも参考にしてください。